第九章 修行編 その1


ショウは自分の技を磨くために一人で修行を開始した。

しかし、なかなか新しい技など思いつかないものだ。


「どうしよう・・・。」


仕方なくショウは剣を振るのを止め、休んでいた。


すると、不思議なことに剣から映像が流れてきた。

恐らく、剣に残された思念なのだろう。


それは、まだ父親が教師になりたての頃の話。

ショウが生まれる前の話だという。


リョウは特に熱血と言うわけでもない普通のおとなしい教師だった。


魔法がものすごい得意と言うわけでもなく、剣が強いわけでもなく。


ただ知識だけは、人並み以上にあった。

そして、優しさも。


生徒たちは、最初はリョウがあまりにも魔法が弱いと思ったのか、相手にしなかった。

それに対し、リョウはただ与えられた仕事をするのみ・・・。


そんな中、一人の生徒が現れた。

名前をリナと言う。


ちなみに、この学校の生徒は子供だけじゃない。

大人になっても魔法に憧れる者はいるのだ。


リナは、リョウと同じくらいの年・・・20代前半といったところだ。


リョウはその時大いに戸惑ったという。

今までリョウに進んで話しかけるものなどいなかったからだ。


リナは、授業で分からない所があったから質問に来ただけのようだ。

少なくとも、当時のリョウはそう思っていた。


だが、現実は違った。

むしろ、リョウにとっては都合のいいことだったのだろう。


「先生・・・。」


「どうしたの?リナさん。」


リョウは言葉の意味に戸惑いながら、優しくたずね返した。


「先生って、どうして先生になったんですか・・・?」


「ああ、そうだね。」


リョウはこのとき、理由を言おうかずいぶん悩んだと言う。

ただ、リナの真剣な眼差しに勝てず、話し出した。


「教師の僕がこんな事言うのもなんだけど、本当は何でもよかったんだ。」


「それって?」


「僕はただ、一人でも多くの人が笑ってくれるように、僕自身何が出来るか考えたらこうなったんだよ。」


「先生・・・。」


「おかしいだろ?」


「そんなことありません!素敵なことです。」


「だが、その結果がこれだ。僕は人付き合いが苦手なのか、生徒とまともに接していない。」


「それは違います・・・。」


必死に否定するリナをさえぎって、リョウは言葉を続けた。


「いいんですよ、事実ですから。それより、僕はもっと努力しないといけないみたいだね。魔法も剣もいまいちだし。」


「そんな・・・。」


「それでは、僕は会議があるので。」


リョウは強引に会話を打ち切った。

こうでもしないと、リナは心配し続けるだろうから。


「あ、はい・・・。」


「それと、リナさん。」


「え?」


「質問があったら、また僕の所に来てね。」


「え、あ、はいっ。」


リョウはその場を立ち去った。

事実、もうすぐ職員同士の会議があるのだ。


リナは、少しうれしそうに、リョウの後姿を黙って見送っていた。


これが、リョウとリナの出会い・・・、ショウの両親の出会いであった。


この後、二人はとんでもないことに巻き込まれる。

それが二人の接近の原因になるとは、このときの二人には全く予想できなかっただろう・・・。


第九章 終わり


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